マリンが大怪我してますので、ご注意ください。
呼吸の音が、いつもより大きく聴こえる。
目に映るのは一面の紅。
敵のものと、――自分の、もの。
はやく、かえら、なければ。
立ち上がろうとして、がくりと膝が折れた。そのままずるずると座り込んでしまう。
(さすがに……マズい、かな……)
それでも、帰らなければ。自分が帰ってこなければ、彼らは、きっと。
(悲しんでくれる……なんて、独りよがりすぎ、ですかねぇ……)
視界がぐらりと揺らぐ。瞼が重い。
思い浮かんだのは、あの暖かく優しい場所。
(僕が、居なくなっても……どうか、あたたかい、ままで)
それだけを願って、目を閉じた。
その刹那に、黒い人影が見えた、気がした。
誰かの声が聞こえる。
やけに重い瞼をこじ開けると、白が目に飛び込んできて眩しかった。
(ここ、は?)
声を出そうとしたが、かすかに咳が出ただけだった。
「マリン!?」
ふと視界が陰り、見慣れた顔が映った。
「起きたんだね、よかったあー!」
鴇羽先輩、そう呼ぼうと口を開くが、すぐさま止められた。
「喋っちゃダメだよ! 絶対安静なんだから!」
その目から今にも涙が溢れそうで、大人しく忠告に従った。
「もうね、みんな驚いたよ。カナタがいきなり『マリンが危ない』って出ていくから……ホント、危ないとこだった。カナタが少しでも遅れてたら、死んでたよ」
淡々とした言葉が、自分が危険な状況にあった事をより強く突き付ける。
そして――鴇羽たちがどれだけ自分を心配していたのかも。
「カナタにお礼言って。あ、今はダメだよ、喋れるようになってからね。ボクは皆に知らせてくるから」
そう言うと鴇羽は静かに部屋を出ていった。
(やっぱり気のせいじゃなかった)
意識を失う直前に見た人影――あれはカナタだったのだろう。自分を助けるために駆けつけてくれたのだ。
その時、バタバタと騒がしい足音が聞こえた。聞き慣れた声も混じっている。
(……大切に想われてるんだって、自惚れちゃってもいいですかねぇ)
ここに向かっているであろう友人たちを思い浮かべて、ガーゼだらけの顔に僅かな微笑みを浮かべた。
危うく死ぬとこだったマリン君。
基本的にマリンは『守る人』なんで無茶しがちです。能力(魔法無効化)のせいで余計に…
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